A子の呪縛②

中学校にあがった。

A子とはクラスが離れ、ホッとした。

新しいクラスではすぐ友達ができ、必ず入らないといけないという決まりの部活動は、誰にも干渉されない陸上部にした。

A子はソフトテニス部で、スカートの中のひらひらフリルのブルマみたいなものをいつもチラチラ見せつけてた。

クラスも部活も違うし、安心して過ごしてた。

部活の仲間は気が合いそうな人はいなかったので、一人黙々と取り組んでた。

夏の大会が終わって、3年生は引退して、まったりとした空気になった2学期、わたしはちょこちょこ2年生に呼び出されて殴られたりどつかれたりしつつ、平和に過ごしていた。

はずだった。

部活のダサくてうるさくて男の話しかしないやつらが

「ねんこごめんね、今までずっとシカトしてて。でも、ねんこ悪くなかったんだね。全部A子のでたらめだったんだね。○子(わたしの友達)に聞いてわかったよ。ごめんね。これからは仲良くしよう。A子のことはみんなで懲らしめてやる」

と言われ、血の気が引いた。ゾッとした。

わたしの知らないところでわたしが貶められ、シカトの対象とされ、わたしの知らないところで誤解が解け、わたしの知らない真実が明るみになったらしい。

なにもかも知らなかった。

それからA子の株は落ちたらしいが、A子は上手い子だから、素直に謝ったり上手いこと周りを洗脳して、ニコニコみんなの輪にしっかり入っていた。

わたしは、A子に何一つ報告も謝罪も受けていない。一言も話していない。

それでも、2年生になっても3年生になっても、わたしに新しく友達ができるたびに、その友達に近づいていくのだ。同じことの繰り返し。

しかし、中学生ともなれば全てはA子の思う通りにはいかなかった。わたしにはいい友達がたくさんいたのだ。優しくて、残酷な友達が。

そのせいで、A子は時に苦汁を嘗めさせられたりもしていたらしい。

なのでA子は、今度は男にシフトチェンジした。

わたしの男に手を出すのだ。

猿のような盛りのついた男にちょこちょこ手を出そうとする。しかしA子は男の性には臆病だったので、ほんのちょっと手を出した程度で終わってしまうのだ。

ほんのちょっとだとしても、わたしにとっては気に入らない。

多分、それが狙いだったのかもしれない。

わたしをイライラさせること、わたしの心が乱れることが狙いだったのかもしれない。

 

わたしは最初、進路調査では中の上くらいの普通高校、T高校を志望高校として提出していた。

わたしより成績が悪く、T高校は圏外のA子も、T高校と書いて提出した。

数ヶ月後、高校卒業後の進路を考えて高校を探し工業高校J科に変更した。

A子も工業高校J科に変更した。

工業高校に体験入学しに行き、他の学科も見て卒業後の進路も調べた。

数ヶ月後の最終確認で、同じ工業高校のK科に決めた。

A子もK科に決めた。

二人とも無事受かった。

まだ入学もしていない時から、わたしの高校生活は終わった、と思った。

工業高校は3年間クラス替えがない。

わたしはクラスの女子たちと3年間一定の距離を保って接し、バイトに明け暮れた。

その間も、A子はわたしの男にせっせとちょっかいを出し続けていた。

アホな男はまんまとA子の誘惑にのり、わたしにバレてフラれた。

わたしと接点のない男には興味がないA子は、その男から去った。

だから、わたしはわざと好きでもない勘違い男と、いい感じに仲良くした。

A子も頑張って勘違い男を誘惑してた。

 

家庭環境も最悪で、小中高とこんな時代を過ごした地元も大嫌いだったわたしは、東京に出ることに決めた。

就職氷河期で、中学生の頃に希望を持って入った学科の進路は、教師も頭を抱えてしまう、見るも無残なものになっていた。

 

東京に出て、やっと親とA子から離れられた…。と、心から安堵した。

だから、命を奪われそうなブラック企業でぶっ倒れるまで元気に働けたのだ。