戦闘機との出会い ◇お題箱から
わたしは30数年間、日本保有の戦闘機の存在を知らなかった。
初めて見た基地は米軍の横田基地だったし、沖縄で見たのも嘉手納基地だった。神奈川の辻堂に住んでた頃、家の上をバリバリ飛んでいたのは米軍の厚木基地の戦闘機だったし、日本には米軍の戦闘機しかいないと思ってた。無知は恥で罪。
もともと旅客機は好きだったけど、たまに空港のデッキで飛んで行く飛行機を眺めていた程度だった。後から考えると飛行機を見に行く時は、病んでる心を抱えてた気がする。
法律事務所ってどんなところか見てみたい!どうせ落とされるだろうし。という動機で法律事務所の求人に応募して面接したら、なぜか未経験なのに受かってしまい、毎日全てがわからないことだらけで、日々切羽詰まりながら仕事してた。
勉強しないと仕事が進まない。聞いたことのない言葉だらけ。休みの日も勉強してた。心が鬱々として、つねに不安だった。
そんな時、金曜日の午後に事務所のボス弁の奥様がいらして「東北六魂祭、ブルーインパルスが事務所のすぐそこで飛ぶわ。みんなで見に行きましょう」と誘ってくれた。
勤務時間中に仕事しなくて良いなんてサイコー、という理由でついて行った。
驚くくらいギャラリーがいて、カメラ小僧だらけだった。
ぼんやりしてたら、飛行機のお腹のメカメカしいところまでくっきり見えるほど低くキラキラしたブルーインパルスが挑発的に飛んできた。
ハッとして、無心で見上げていたら、後方からスモークを出した5機がキラキラしながら空を突き抜けていった。あまりにも美しくて力強かった。
その時に、今までしてきた苦労も傷もこれからの不安も不満も、もう大丈夫!これがまた見られるなら、見るためなら幾らでも頑張れる!という、初めて湧き出る感情に全身が満たされていた。
やっとわたしはこの世に生まれた、と思った。世界がワントーンもツートーンも明るくなった。
自己肯定と自信が生まれたあの瞬間のことは今でもはっきり覚えてる。
この出会いは、わたしの光であり、救いだった。
そこから、あれには人間が乗ってるのよね?何者?と調べたら、やはり人間が乗ってて、戦闘機のパイロットとのこと。
戦闘機??日本の戦闘機って何??て調べたら3種類もいて、めちゃくちゃカッコいい。
ちょっと待ってやだ素敵。戦闘機飛んでるところ見てみたいたすけて。有給休暇いただきます。と、あれよこれよとマグマのようなお熱を上げていくのでした。