お正月は終わった ◇お題箱から

「お正月」とは、お正月が大好きと公言し続けるわたしの代名詞だった。

 

年末に母と市場やスーパーで「だってお正月が来るもんね」と、普段買わない食材を買ったり、お菓子を買い込んだり、しまいには大型書店に出向いて予算を決めて「お正月に読みたい本」をどっしり買ったり、

母が朝から台所に立って、こつこつとお正月料理を拵えて、中途半端な時間に食事をとり、午前0時にリビングに家族全員いるなんて、一年に一度、大晦日だけの出来事だ。

元旦の朝、お正月がきてしまったからにはもう終わってしまうのだと少しさみしくなる。

でも、元旦の朝特有の怠惰な時間を過ごしていると、とっぷりと理想通りの求めていた時間を過ごしていることに、心が満たされていた。

何もしなくてもごはんが出てくる、暖かいリビングがある、犬がいて猫がいる、パジャマの裾が長くてあたたかい。

母が離婚するまで、家の中では常に気が張り詰める生活を送っていたわたしは、かなり遅くにやってきたお正月の幸福に涙が出そうになりながら、一年一年を楽しみに、大切にしていた。

そんなお正月は、わたしが結婚したことによって、終わってしまった。

つらいことではないけど、少しさみしい。

でも、もう戻らない時間を大事に思い出すことが好きだから、それでいい。

これからはどんなお正月を過ごそうか、なんて、そんなことは考えない。

もう、わたしの大好きな終わってしまったのだから。

大切なお正月は過去のものとなったので、不変なのだ。